―――彼らはいつも7人だった。

わずかな時さえ惜しみ、町外れの廃工場に集った。
忘れ去られ、錆と砂埃を胎に積もらせた直方体。

殺風景でありながらどこか情趣さえ漂うのは、かつて満ちていた
人の息吹が乾燥し、空間に薄く哀愁を添えているせいだ。
過去の栄華に思いを馳せるように……見る者の胸を、打つこともある。

若者たちは、しかし異なった所感を抱く。
忘却された世界を、所有者なき領土と受け止める。
老いたものを、若者が受け継ぐ。

世界が連綿と繰り返してきた摂理をなぞり、彼らはたまり場を得た。

家庭でも世間でもない安息の場所。

樋口章二が《聖域》と呼んだ場所。

孤独を重んじる章二が斯かる発言をしたことは、6人の印象に強く残ったものだ。
あまりにも強いイメージは誤認さえ呼び起こして、迷路にいざなうこともある。
聖域の是非については語るを得ない。

約束の地について巨視的に論じるには、あまりにも未熟にすぎる。
ただ確かなことは、彼ら7人にとってそれが途方もなく重かったということ。
心の大部分を占めていたという事実。
その一点に尽きた。

……世界は偽りと裏切りで満ちている。

人と人は傷つけ合う。どんなに親密でも衝突は避けられない。
聖人の高潔さでも身につけない限り、行き過ぎた相互理解は致命的な
傷の応酬となるばかりで、互いを破壊してしまう。

しかし。

たとえ接触が傷つけあいだとしても、それは相手が実在することの証拠となる。
だからこそ生身の絆はかけがえのないものとなるのだということを……

千々に撒かれたパズルのピース。

どうか、優しく配列されますように―――



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