|
「や、ロティ、待たせたかな?」
|
|
「あ、先生! すみません、わざわざ来て頂いて」
|
|
「いや、構わない。それより、話というのはなにかな」
|
|
「はい、戦い方のことなんですけど。助言を頂きたいなと思いまして」
|
|
「私でよければ、いいよ」
|
|
「ありがとうございます。
え〜と、まずですけど、戦い方の基本的な部分を変えようと思います」
|
|
「ほう? 基本的な部分というと、3人での陣形戦闘から?」
|
|
「はい。あれは、敵の数がある程度決まっている場合の戦い方だと思うんです」
|
|
「そうだね」
|
|
「相手がわからない以上、もっと自由に戦ったほうが効率がいいんじゃないかなと」
|
|
「敵の強さや数に合わせて、臨機応変に動いていくということかな?」
|
|
「そうです。 幸い、今回は多くの部隊を作るわけじゃないですから……」
|
|
「うん、1人の司令塔。 つまりは、君がまともな指示を出せれば戦えるだろうね」
|
|
「う……な、なんかプレッシャーをかけてませんか?」
|
|
「弟子への愛ゆえ……だよ」
|
|
「………………」
|
|
「冗談はさておき、実際に君にかかる責任は大きい。
スピリットの子達も、前の戦争の時と比べて、随分力が落ちている」
|
|
「は、はい、がんばります」
|
|
「ふふ……大丈夫。 君ならなんとか出来るって」
|
|
「そ、そんなぁ……」
|
|
「ほら泣かない泣かない」
|
|
「泣いてませんっ! …では続きいきますね。
今僕は時間単位で敵の動きを予測して指示を出す、ビジョンという戦い方をしようと思っています」
|
|
「ビジョン?」
|
|
「いや、まぁ、さっきの臨機応変に戦うってのに名前を付けただけなんですけど…」
|
|
「ああ、なるほど」
|
|
「まず、戦闘の時間をターンという単位で区切ろうと思います」
|
|
「ふむふむ……」
|
|
「この3つの行動をそれぞれフェイズと呼びます」
|
|
「移動、予約、応酬……。1つのターンには、この3つのフェイズが存在するんだね?」
|
|
「はい。まずは 『移動(ムーブ)フェイズ』 について説明します。
何か穴があったら指摘してください」 |
|
「はいはい」
|
|
「このフェイズでは、みんながそれぞれ好きな場所に移動します」
|
|
|
|
「陣形はとらないのかな?」
|
|
「はい。 一人一つの行動ではなく、一人が沢山の行動を取れる様にしたいので、陣形はとりません」
|
|
「防御専門がいないってことは、背後をとられたら危ない気がするんだけど」
|
|
「そうなんです……みんなが警戒して
敵に背中を見せないように気をつけないと」
「ある程度実力がある者でも、側面や背後から
攻撃されると厳しいからねぇ……」
|
|
|
|
「わかりました、そこは気をつけるようにします」
|
|
「そうだね。そういえば攻撃は?」
|
|
「あ、攻撃はまだしないんです。 このフェイズで行うのは、簡単に言えば場所取りですね。
相手に対して、自分が有利に立てそうな位置に移動してもらえればいいです」
|
|
「……となると重要なのは、相手との距離だね。
近接戦闘が強い者、遠距離攻撃が得意な者。君はそれを把握しないとね」
|
|
「そういうところに助言を欲しいんですけど……」
|
|
「なに、見ていればすぐにわかるさ。逆にそれもわからないんじゃ、隊長の資格は無いよ」
|
|
「…………が、がんばります!」
|
|
「ふふ、そうだ。1つだけ例をあげようか」
|
|
「え?」
|
|
「赤スピリットの2人だけど、特性は真逆なんだよ。
ヒミカは主に近接戦闘が得意で、ナナルゥは遠距離から広範囲に仕掛けるのが得意」
|
|
「なるほど」
|
|
「まぁ、実はヒミカは相手が一人なら、遠距離もこなせる」
|
|
「えぇっ! じゃあ、どこにいてもいいじゃないですか」
|
|
「その代わりといってはなんだが、あの子は防御力が全然ない。
一対一ならいいかもしれないけど、もし囲まれでもしたら危ないね」
|
|
「そう……なんですか……?」
|
|
「そういう者がいることを踏まえての、臨機応変ということじゃないのかな?」
|
|
「すみません……」
|
|
「他に気を付けるのは、仲間を守るスキルを持つ者の位置取りだね。
遠距離型の者を守っても良いし、近接型の者と組ませて前に出すのもいい」
|
|
「それと、みんなの 固有空間能力(ZOP) を考えた位置取りも重要です」
|
|
「固有空間能力?それは初耳かな」
|
|
「移動後に、特定の範囲に発生させることが
できる能力で、 味方の能力を上げたり、
逆に敵の能力を下げたりできます」
「へぇ……それは便利そうだね」
「効果範囲もそれぞれ違いますし、使いどころ
次第では戦局を大きく左右できると思います」
|
|
|
|
|
|
「なるほど…………うん。今までのところに、大きな問題はないよ」
|
|
「よかった。じゃあ、次ですけど――」
|
|
「ロティさ〜ん、そろそろご飯ですよ〜」
|
|
「……あ」
|
|
「もう食事の時間なんだね。遅れると可哀相だよ?」
|
|
「は、はい。それでは、今度また次の 『予約(コマンド)フェイズ』 についてお願いします」
|
|
「わかった、適当に時間開けておく」
|
|
「それじゃ行きましょう、先生」
|
|
「はいはい……」
|