時は18世紀末…
絶対王政の元、優雅なる王朝文化と貴族達の時間が
咲き誇った、欧州の花園、フランツ共和国。
しかし……その麗しの地にも、静かに、そして確実に
落日の時が近付いていた。虐げられた人民の怒り、
それに気づかぬ特権階級の愚鈍。いつしか、『帝制派』
と『革命派』が入り乱れた混沌の時代となっていた。
再起を期して、7年にも及んだ、宿敵イングランド
との戦いは敗北に終わり、いくつかの講和と血の交換
によって共和国はかろうじて、その体を保っていた。
そんな共和国の最前線に位置する地域を治める
地方領主であるガストンにある日、一人の男が呼び
出された…。その男は、他人に生業を問われた時、
「便利屋だ」と答える。ふざけている訳ではなく、
事実、彼の仕事はそう呼ぶにふさわしかった。
些細な調べ事から……人に教える事が出来ないような
物事まで……あらゆる内容の調査を請け負うのが、
彼の仕事であった。
そんな彼に託された依頼は……
領主の子息が妙齢に達したため、后を迎えるという。
そこで領主は男に、3人の后候補の素行を洗い出し、
素性に問題が無いかの調査と、選ばれし后が領主の
命令に背かない、従順な隷嬢になるよう、
正しい教育をせよとの依頼であった。
また、この依頼には、以下のことが付け加えられた。
各国・各名家の手前、決して表沙汰にしてはいけない。
全ては、闇の出来事として始末するようにと。
また、もし何か問題が発生した場合でも、当方は一切
関知しない。貴殿の手に余る問題が発生した場合、
貴殿を処刑し、全てを闇に葬ると。
男は、別段深く考えることも無く、その依頼に応じた。
そして、物語が始まろうとしていた……。そう、
『姫狩りビト』の物語である。
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